ガンダムマーカーは何で拭けば落ちる?8種類で比較してみた|1時間 vs 24時間乾燥

塗料・トップコート

ガンダムマーカーで塗っていると、いつか必ず思う。

「これ、何で拭けば一番きれいに落ちるんや?」

専用のものを使えばいい。

それは分かる。

だが、目の前にはエナメル溶剤がある。
Mr.カラーのうすめ液もある。
ウェザリングカラーの薄め液もある。
消毒用アルコールもある。

コロナ禍に買ったアルコールが、まだ洗面所の奥に眠っている家庭もあるだろう。

ならば試せばいい。

人間というものは、説明書を読むだけでは納得しない。
自分で塗り、自分で溶かし、自分で失敗して、ようやく理解する生き物なのだ。

ということで今回は、ガンダムマーカーの拭き取り性能を8条件、乾燥時間1時間・24時間の計16試験片で比較した。

形式だけは医学論文風である。

中身は、部品箱の底から拾ってきたファンネルである。


Abstract

Background

ガンダムマーカーは手軽に使用できる一方、はみ出しや修正時に「何を使って拭き取るか」で悩むことがある。

模型用溶剤、家庭用アルコール、水、ウェットティッシュなど、手元には複数の候補が存在する。

しかし、乾燥時間によって除去性能がどこまで変化するのかは、実際に並べて試さないと分かりにくい。

Objective

ガンダムマーカー「ガンダムメタバイオレット」を塗布した無塗装プラスチックパーツに対し、8種類の溶媒・処理方法を用いて、

  • 1時間乾燥後
  • 24時間乾燥後

の除去性能を比較する。

Primary endpoint

色の落ち具合

Secondary endpoints

  • 拭きムラ
  • 表面ツヤの変化

なお、ベタつきについては今回の試験では全条件で明確な発生を認めなかった。


Subjects

被験体は、部品箱の底に長期間無作為放置されていたファンネルパーツ16個。

同一キット由来と考えられ、おそらくヤクト・ドーガのものである。

おそらく、である。

医学論文ならここで被験者背景を詳細に記載するところだが、彼らに年齢も性別もBMIもない。

あるのは、

「長年、箱の底で転がっていた」

という既往歴だけである。

表面は無塗装、トップコート未施工。


Test paint

使用したのは、

GSIクレオス ガンダムマーカー ガンダムメタバイオレット

商品名 | GSIクレオス Mr.Hobby
株式会社GSIクレオス ホビー部が展開する模型商材ブランド、Mr.HOBBYの公式サイトです。製品情報 を掲載しています。

試験片の各面に塗布した。


Study design

研究デザイン:単施設、非盲検、非無作為化、趣味人主導、in vitro比較試験

Randomization:なし
Blinding:なし
Sample size:各条件 n=1
Statistical analysis:なし
Ethics committee:当然なし

そして何より、

Funding:自腹

である。


使用した8条件

今回使用したのは以下の8種類。

1. タミヤ エナメル溶剤 X-20

本来はタミヤカラー・エナメル塗料の希釈、拭き取り、洗浄に使用する専用溶剤。

250mLは公式価格770円。成分表示は「有機溶剤」。

今回の目的は、ガンダムマーカーにも効くのかを見ること。

専門外来の医師を別領域の患者に連れてきたようなものである。

価格目安

250mL:770円
約3.1円/mL


2. Mr.カラーうすめ液

Mr.カラー用の標準的な薄め液。

Mr.カラーの希釈や器具洗浄に使用される。250mLは現在660円だが、メーカーは価格改定予定も案内している。

分類としてはラッカー系塗料用の有機溶剤。

価格目安

250mL:660円
約2.6円/mL


3. 消毒用アルコール

本来の仕事は模型ではない。

手を消毒するものである。

主成分は製品によるが、一般的にはエタノールを主体とする。

模型専用品ではないため商品によって濃度、添加物、価格が異なる。

今回使用したものは家庭にあった手指消毒用アルコール。

利点は何といっても入手性。

ドラッグストアでも買えるし、家庭によっては、

「コロナの時に買ったやつ、まだあるで」

という可能性すらある。


4. 水+ティッシュ

水。

人類が最も容易に入手できる液体である。

価格はほぼ無視できる。

これで落ちれば世界は平和である。


5. Mr.ウェザリングカラー専用うすめ液

Mr.ウェザリングカラーの拭き取り、粘度調整、洗浄に使用する専用品。

110mLで616円。

価格目安

110mL:616円
約5.6円/mL

今回使用した模型用液剤の中では、容量単価はやや高い。


6. アルコールウェットティッシュ

家庭にある可能性が高い代表。

商品によってアルコール濃度や価格は異なるため、厳密なmL単価比較は困難。

ただし、

蓋を開けて1枚取るだけ

という操作性は圧倒的である。

模型机の横で「ちょっとはみ出した」程度なら、これで済めば非常に楽。


7. 無処置

何もしない。

Negative controlである。

落ちなければ正常。

落ちたら怖い。


8. ガイアカラー T-06M ブラシマスター

ガイアカラー薄め液にリターダーを加えたラッカー系エアブラシ用溶剤。

公式価格は500mL 1,650円。

価格目安

500mL:1,650円
約3.3円/mL

単価だけ見ると極端に高価ではない。

ただし模型用有機溶剤なので、使用時の換気と臭気には注意したい。


Methods

各ファンネルにガンダムメタバイオレットを塗布。

その後、

  • 1時間乾燥群
  • 24時間乾燥群

に分けた。

各溶媒について綿棒の頭部を液中へ完全に浸漬。

そのままだと液量が多すぎるため、ティッシュへ軽くトントンと当てて余分な液を落とした。

その後、試験面を、

力を入れず、同一方向へ5ストローク

拭き取った。

ゴシゴシしない。

往復もしない。

5回。

人間の力加減という極めて怪しい測定機器ではあるが、可能な限り条件を統一した。


Results:1時間乾燥後

タミヤ エナメル溶剤

Primary endpoint:変化なし

拭きムラ:変化なし
ツヤ:変化なし

特記事項:

ホンマに変化なし。

エナメル塗料を落とす能力と、ガンダムマーカーを落とす能力は別の話だということを、非常に静かに教えてくれた。


Mr.カラーうすめ液

Primary endpoint:そこそこ落ちた

拭きムラ:あり
ツヤ:消失傾向

明確に作用はしている。

ただし「きれいに消えた」というより、

塗膜と一緒に表面の雰囲気まで持っていった

印象がある。


消毒用アルコール

Primary endpoint:かなり落ちた

拭きムラ:あり
ツヤ:消失傾向

これは意外だった。

家庭用品代表が、模型用溶剤勢を相手に普通に戦っている。

しかも入手性が高い。

1時間程度なら、

「ちょっと塗り間違えた。今なら戻れる」

という場面でかなり使えそうだ。


水+ティッシュ

Primary endpoint:変化なし

拭きムラ:なし
ツヤ:変化なし

水は水であった。

世界はそこまで甘くない。


Mr.ウェザリングカラー専用うすめ液

Primary endpoint:ほぼ変化なし

拭きムラ:ほぼなし
ツヤ:大きな変化なし

タミヤのエナメル溶剤に近い結果。

本来の対象塗料が違うのだから当然といえば当然である。


アルコールウェットティッシュ

Primary endpoint:まずまず落ちた

拭きムラ:あり
ツヤ:低下

擦れたような落ち方。

「きれいに除去した」とまでは言えないが、1時間乾燥なら一定の効果は確認できた。

そして何より、

手軽である。

この一点は強い。


無処置

そのまま。

以上。


ガイアカラー T-06M

Primary endpoint:最も強く落ちた

拭きムラ:拭いた部分は明瞭に除去
ツヤ:消失

綿棒が通った部分だけ、はっきりと塗膜が消えた。

これは強い。

強すぎて、

「落とした」というより「そこだけ世界を書き換えた」

感じすらある。


Results:24時間乾燥後

ここからが本番である。

塗料というものは時間を与えると態度が変わる。

人間関係と同じである。


タミヤ エナメル溶剤

Primary endpoint:変化なし

拭きムラ:なし
ツヤ:変化なし

1時間でも変わらず、24時間でも変わらず。

一貫性だけなら今回トップクラス。

何もしないという強い意志を感じる。


Mr.カラーうすめ液

Primary endpoint:結構落ちた

拭きムラ:あり
ツヤ:消失

液垂れした部分にくすみも認めた。

除去力はある。

しかし、基材表面への影響も考えて使うべき結果だった。


消毒用アルコール

Primary endpoint:ある程度落ちた

拭きムラ:あり
ツヤ:若干残存

1時間群と比較すると明らかに弱い。

ただし完全無効ではない。

塗膜が乾燥する前なら非常に使いやすい一方、24時間後になると除去には時間や回数を要する可能性がある。


水+ティッシュ

すべて変化なし。

水は24時間待っても水だった。


Mr.ウェザリングカラー専用うすめ液

Primary endpoint:ほぼ変化なし

エナメル溶剤と同様。

得意分野ではない相手に無理をさせてはいけない。


アルコールウェットティッシュ

Primary endpoint:ほぼ変化なし

ここは1時間群との差が大きかった。

1時間後には多少効いたが、24時間後にはほとんど役に立たない。

乾く前に仕事を頼まなければ、彼は帰ってしまう。


無処置

当然、そのまま。


ガイアカラー T-06M

Primary endpoint:今回もっとも強く除去

拭きムラ:拭いた部分は明瞭に除去
ツヤ:消失

24時間経過しても強い。

今回手元にあった液剤の中では、

「時間が経ったガンダムマーカーを確実に落とす」

という一点では最も頼りになった。

ただし、ツヤまで変化した。

強い溶剤というものは、敵だけを選んで攻撃してくれるとは限らない。


Head-to-head comparison

消毒用アルコール vs ガイア T-06M

今回、特に効果が大きかった2種類を直接並べて比較した。


1時間乾燥

両者とも明確にガンダムマーカーを除去した。

しかし、ガイアT-06Mでは綿棒が通った部分と塗膜が残った部分の境界が非常にはっきりしている。

言い換えると、

「ここまで拭いた」

が目で分かる。

細い綿棒を使用すれば、

  • 部分修正
  • 細いラインだけ消す
  • 塗膜を削るようにデザインする

といった使い方にも可能性がありそうだ。

極端に言えば、

消すことで字を書く

ことすらできそうな除去力である。

一方、消毒用アルコールは除去力では一歩譲るものの、今回の試験では比較的穏やかな印象だった。

広い面積を処理するなら、こちらの方が扱いやすい可能性がある。


24時間乾燥

ここで差が大きくなった。

消毒用アルコールは、1時間群ほど容易には落ちなかった。

一方、ガイアT-06Mは24時間後でも明確に除去。

今回の条件に限れば、

乾燥後のガンダムマーカーにはガイアT-06Mが圧倒的に強かった。

もちろん消毒用アルコールでも、接触時間を長くする、拭き取り回数を増やす、といった方法でさらに落とせる可能性はある。

そこで追加試験を行った。


Exploratory practical application test

消毒用アルコールで広い面積を落とせるか

ここからは本試験とは別の探索的試験。

目的は、

「強力な模型用溶剤ではなく、消毒用アルコールで基材への影響をできるだけ抑えながら、広い範囲のガンダムマーカーを落とせないか」

である。


Test piece

グレーのライフルパーツを使用。

凹凸、溝、モールドが多数存在する。

そこへ、

ガンダムマーカー ガンダムホワイト

を広範囲に塗布した。

24時間乾燥。


Procedure

乾燥後、普段手を消毒するときと同じように、消毒用アルコールを直接スプレーした。

約3分間放置。

その後、ウエスで強い力を加えずに拭き取った。


Result

驚いたことに、平面部分の白はかなりきれいに除去できた。

しかも、凹部やモールド内部には白が残った。

つまり、

広い面積へ塗る → アルコールで表面だけ拭く → 溝だけ色が残る

という状態になった。

これは面白い。

ガンダムマーカーを広めに塗り、消毒用アルコールで拭き取ることで、

簡易的なスミ入れやモールド強調のような使い方

ができる可能性がある。

専用技法として成立するかどうかは、もう少し試験が必要。

だが少なくとも今回のパーツでは、

「失敗を消すためのアルコール」が、

仕上げの道具として使える可能性

まで見えてきた。


Cost-performance analysis

今回の実験では単純な価格だけでなく、

  • 除去力
  • 入手性
  • 使用面積
  • 臭い
  • 使いやすさ

まで含めて考える必要がある。

処理液価格目安今回の除去性能コスパ所感
タミヤ エナメル溶剤 X-20250mL 770円ほぼなし今回用途では低い
Mr.カラーうすめ液250mL 660円中程度使用可能だが表面影響に注意
消毒用アルコール製品差あり1時間◎、24時間△〜○非常に高い
ほぼ0円×安いだけ
Mr.ウェザリングカラー専用うすめ液110mL 616円ほぼなし今回用途では低い
アルコールウェットティッシュ商品差あり1時間△、24時間×手軽さ特化
無処置0円Control
ガイア T-06M500mL 1,650円◎◎除去力を含めると高い

模型用製品の価格・用途はメーカー公式情報を基準にした。


Discussion

今回の結果から最も重要なのは、

「一番強い溶剤を使えばいい」という話ではない

ということだと思う。

ガイアT-06Mは明らかに強かった。

24時間乾燥後でもガンダムマーカーをしっかり除去した。

だからといって、すべての場面でT-06Mを使う必要はない。

たとえば、塗って1時間以内。

少しはみ出した。

広めに消したい。

そんな場面なら、消毒用アルコールで十分対応できる可能性が高い。

模型用シンナーほど強い臭いもなく、家庭にすでに存在する可能性も高い。

何より、

模型店へ行かなくてもいい。

これはかなり大きい。

一方、24時間以上経過して、しっかり乾燥した塗膜。

細い部分だけ修正したい。

確実にそこだけ消したい。

こうなるとT-06Mが頼もしい。

消毒用アルコールとT-06Mは、どちらが勝者という関係ではない。

役割が違う。

広い面を穏やかに処理するアルコール。

局所を強く落とすT-06M。

戦場に必要なのは最強の兵器一つではない。

役割の違う兵器を、適材適所に置くことなのだ。


Practical conclusion

今回の結果だけで整理するなら、僕ならこう使い分ける。

広い面積を拭きたい

消毒用アルコール

安い。
手に入りやすい。
臭いも比較的扱いやすい。

家庭に残っているなら、まず試す価値はある。

特に塗って間もないガンダムマーカーにはかなり使いやすい。


モールドを残して表面だけ拭きたい

消毒用アルコール

今回の追加試験では非常に面白い結果になった。

塗料を広く塗ったあと、アルコールで表面だけ落とし、溝に色を残す。

用途次第では単なる「修正液」ではなく、

ひとつの塗装技法として使える可能性

がある。


時間が経ったガンダムマーカーを落としたい

ガイア T-06M ブラシマスター

今回の条件ではこれが一番強かった。

24時間乾燥後でも明確に除去。

細かい修正にも向きそう。

500mLで1,650円なので、模型作業で少量ずつ使うなら一本常備しておいても、それほど非現実的な費用ではない。


家にあるもので何とかしたい

まずは、

消毒用アルコール。

コロナ禍で買ったボトルが棚の奥から出てきたなら、

君にはまだ戦える武器が残っている。


Limitations

もちろん、この実験には限界がある。

というより、限界しかない。

各条件 n=1。

統計解析なし。

拭き取り圧は人力。

塗膜厚も厳密には統一されていない。

試験片は、

たぶんヤクト・ドーガ。

さらにプラスチック素材、成形条件、塗装、トップコートの有無によって、溶剤への反応は変わる可能性がある。

今回、消毒用アルコールで大きな損傷は確認できなかったが、

すべてのプラスチックに安全であることを証明したわけではない。

T-06Mを含む強い模型用溶剤では、ツヤ変化も確認した。

白化、ひび割れ、表面荒れ、塗装剥離などが発生する可能性は否定できない。

必ず不要パーツや目立たない場所で事前に試してほしい。

そして、

よく落ちることと、安全であることは同じではない。

ここは大事。

本記事を参考に実施した結果生じたパーツの損傷については責任を負えないので、最終判断は各自でお願いしたい。


Conclusion

ガンダムマーカーを拭き取る。

たったそれだけの話だった。

だが8条件を並べ、1時間待ち、24時間待ち、さらにライフルまで白く塗ってしまった。

人はなぜ、ここまでしなければ納得できないのだろう。

だが、その答えは出た。

早めに、広く、手軽に落とすなら消毒用アルコール。

時間が経った塗膜を、強く、局所的に落とすならガイア T-06M。

この2つは競合ではない。

役割が違う。

消毒用アルコールは家庭用品から模型机へ。

T-06Mは模型机の常備薬へ。

そしてエナメル溶剤は今回、

何もしなかった。

だが、それもまたデータである。

効かなかったという結果まで含めて、実験なのだ。

作る。

試す。

たまに失敗する。

そして、失敗したら記事が一本増える。

ガンプラ実験室としては、それでいいのである。

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